doi : 10.15027/da72
ふんせう
| ライセンス種類 |
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|---|---|
| ライセンスURI | https://dc.lib.hiroshima-u.ac.jp/da/page/license1 |
| 所有機関等 | 広島大学 |
| タイトル | ふんせう |
| タイトルヨミ | フンセウ |
| 巻号 | 下 |
| 物理サイズ | 1冊(全3冊) |
| 装丁 | 和装 |
| 写刊区分 | 写本 |
| 所在 | 広島大学図書館 |
| コレクション | 奈良絵本 室町時代物語 |
| 説明1 | [あらすじ] 塩屋で成功した正直者の文太は鹿島大明神に参詣して子宝を授かる。成長した姉妹は才色兼備の美女と評判になり、関白の御子二位中将に求婚されて一家は末永く繁栄した。 |
| 説明2 | [解題]「庶民の立身出世を描いた到富(ちふ)譚として、最も代表的な室町物語」(『中世王朝物語・ 御伽草子事典』)。庶民物、祝儀物、立身出世譚に分類される。物語末尾に「まつくめてたき事のはしめには、此さうしを御覽しあるへく候。」とあるように、正月など、めでたい席で読まれる本であった。立身出世した文正、玉の輿に乗った姉妹にあやかろうとしたものと思われる。伝本は非常に多く、十余系統に分かれる。その伝本の多さは、いかにこの物語が広く読まれていたかを物語る。広大本は奈良絵本3冊で、丹緑本(近世初頭、墨刷りの絵入り版本の挿絵に、出版時に丹緑黄の筆彩色を施したもの)の本文を写し、奈良絵本として仕立てたものと見られる。同じく丹緑本系統の奈良絵本としては天理図書館蔵本(題簽「弾上物語」)などがある。 参考文献 【テキスト】1『室町時代物語大成』11/2『室町時代物語集』5/3『京都大学蔵むろまちものがたり』3、7、12/4日本古典文学大系『御伽草子』 /5日本古典文学全集『御伽草子集』 ほか。 【研究文献】1三谷栄一「文正草子と春のことぶれ」(三谷栄一『日本文学の民族学的研究』昭和35年、有精堂)/2岡田啓助『文正草子の研究』 桜楓社 1983./3安達敬子「『文正草子』試論―御伽草子にみる『源氏物語』受容の一例―」(『国語国文』第65巻第4号) |
| 翻刻 | [page 2]ふんせう 下 ふんせう申けるは、とのはらたち、つれ〳〵にましまさは、此にしのみたうへまいりて、なくさみ給へと申けれは、やかてまいり御覽するに、まことにたつとくありかたきこゝちして、かなたこなた見給へは、ひわことたてならへをきたるを御覽して、めつらしくおほしめし、ひわをひきよせひかせ給ふ。ひやうゑのすけことをひき、とうまのすけしやうをふき、しきふの太夫 [page 3] ふえをふき、おもしろくかんるいをなかしける。ふんせうかうちのものこれをきゝて、よしなき人をみたうへいれ給ひて、かきかへをやふるやらん、ひしめき候と申けれは、ふんせう申は、見てきたれと申ける。十人はかりゆきて、をそくかへるほとに、又卅人ほとゆけともかへらす。あれゆき、これゆき行ほとに、みな〳〵ゆきてかへらす。ふんせうふしきに思ひて、いそきゆきて見るに、ニ三百人しらすになみゐたり。ちかくよりてきゝけれは、くわんけんのおと、みゝにあきれたるふせひなり。おもしろさたつとさこゝろもおよはす、これほとおもしろくありかたき事を、いまゝてきかさりし事のうたてさよ。ありかたくつみもきえ候、御ひきてもの申さんとて、さま〳〵の物まいらせけれは、此人々かねてより、むこひきてものとりたまへとてわらひ給ふ。ひめ君 [page 4] は、ありしすゝりのしたのふみ、人しれすこゝろにかゝりけれとも、いひつたふへきたよりもなし。そのうへ一とせくたり給ひしこくしよりも、したの人にてあるらんとおもひみたれ給ひけり。ふんせうつかひをたてゝ申けるは、わかひめたちこんどはきかせへく候あひた、いま一度「ど」おもしろくひきたまへと申ける。ちうしやう殿みな〳〵うれしくおほしめし、ひきつくろひてみだうへうつらせ給ふ。ひめきみたちもひきつくろひ、女ばうたち、はしたものにいたるまて、心もおよはすいてたゝせみだうへ入たまふ。かたいなかともおほえす、こゝろにくきせひにて、ぢん、しやうのにほひみち〳〵て、よしあるさまなれは、いつよりも御こゝろをすまして、ひわをひかせ給ふ。ひめきみはきゝしり給ひて、はちをとのけたかさ、あいきやうつきたるてあつかひも、たと [page 5] えんかたなし。御身をやつし給へとも、ゆふにけたかく、いつくしく、いかなる風のたよりもかなとおほしめしける。おりふしあらしはけしくふきて、みすをさつとふきあけたるひまより、ひめ君とちうしやうとのの御めを見あはせたまひける。 [page 6] かのひめきみの御ありさま、かんのりふしんやうきひもこれにはすきしとそ見え給ふ。いよ〳〵たしなみ、ことひわをひきあわせふきならし給へは、ちやうもんの人々、あまりのおもしろさに、すいきのなみたをなかしける。ひめたちのこゝろのうち、たとえんかたなし。ふんせう又さかつきをはしらめて、中將とのにさしにけり。ちからなくまいりて、又つねおかに給へはいつぞやも申て候、御きらい候か、ひめのかたに見めよき女ばうたちおほく候。いつれにてもめされ候へ。これよりきたに候とて、ゆひをさしてをしへける。人々めを見あはせて、御心のうちおしはかり、うれしく候とてわらひ給ふ。さてそのよをすこし給ふへしともおほえねは、人しつまりてしのひいり給へは、ひめきみもありつるすかたわすれやらすおもひ給ひ、かうしもおろさす月くまなきをなかめつゝゐ給ふおりふし、中 [page 7] ちうしやうとの八ゑのかきをしのひいり給へは、れいならすおとこのかけみえけれは、むねうちさわき、かたはらにいりたまへは、ちうしやうとのもともにいらせ給ひ、御そばにそひふさせたまへは、かの人やらん、おそろしくもあさましく、さしも人々をきらひ、あき人にちきりをむすひて、ちゝはゝの聞給はん事、かなしくはつかしくて、おもひよるましきよしの給へは、中しやうとのもことはりとおほしめし、ゑふのくらんとかかたりしより、はしめいまゝてかきくときかたり給ふに、ひめ君もうちとけ給ひ、いつしかあさからすちきり給ふ。さるほとにあきのなかき夜なれとも、あふ人からのしのゝめはやくしらみけれは、 こひ〳〵てあひ見しよはのみしかきは むつことつきぬにゐまくらかな と、かやうにのたまへはひめきみうちそはみつゝ [page 8] かすならぬ身にはみしかきよはならし さてしもしらぬしのゝめの空 それよりもてんにあらはひよくのとり、ちにあらはれんりのえたとそちきり給ひけり。 [page 9] しのふとすれとあらはれて、さゝやきあへり。はゝうへもきゝ給ひて、あさましや、大みやうたちをきらひて、あき人にちきりしことのかなしさよ、あき人につけてをい出さんとそ申けるほとに、ふんせうかところにこそ、みやこよりくたりたるあき人をあひしをきて、くはんけんさせ候よし大くうしとのへきこしめし、御つかひありしかは、ふんせううけたまはり、かしこまつて候とて、あき人に申けるは、大くうしとの御ちやうもんあらんとの給ふあひた、いつよりもひきつくろひて、くはんけんしたまへと申けれは、けふこそあらはれんとおほしめし、みやこにての御しやうぞく、いつれももたせ給へは御かふり、そくたいのすかたにて、かねつけまゆつくり給へは、心もことはもおよはすいつくしく見え給ふなり。ふんせうかうちのものこれを見て、あき人はいつれやらん、たゝ神ほとけの [page 10] あらはれ給ふかと、おとろきける。大くうしとの、きんたち五人つれ給ひて、こしにていらせ給ひ、みだうのしやうめんを見給へは、ちうしやう殿と見給ひきもをけし、こしよりころひおり、さてもてんかの御子にニゐの中しやうとのうせさせ給ふとて、国〳〵をたつねまいらせ給ふとうけたまはり候。これにましますを、夢にもしり奉らぬ事あさましさよとあきれて、かしこまりてそゐ給ふ。 [page 11] さるほとにひやうゑのすけ、たちいてゝいかにさたみつ、是へまいれとの給へは、ふんせういそきいゑにかへり、あさましや人のめを見すましきものは京のあき人なり。かたしけなくもわかきみを、なめけに申とふるいなきけり。大くうし殿はふんせうをめし、なんちしらすや、かたしけなくもてんか殿の御子に、ニゐのちうしやうとのと申て、ならふかたなき御人なり。さてもみやうかにつきなんと申給へは、ふんせううけたまはり、きもたましゐもうするこゝちして、此ほとあき人とおもひつるに、てんかの御子にてわたらせ給ふを、ゆめにもしらすとせきめんして、又うちへもとりけり。むことのはてんかそ、てんかはむことのよと、物にくるふよしによろこひける。大くうし殿は、てつから御こしをかき、わがやとへそうつし申、八かこくの大みやうにふれけれは、我も〳〵とまいりあつまり [page 12] ける。これほとめてたきさいはひを、ひき給はんとて、しよ人をきらい給ひけると申ける。ちうしやうとのは、ひめきみをくして、みやこへのほらんとおほしめし、御いてたち給ふ。とうごくの大みやう一万よき、御ともにまいりけり。御かいしやくには大くうじとのゝきたのかたをはしめとして、われも〳〵とそまいりける。ふんせうか四はうのくらのたから物はいつのやうそとて御くるまをは金銀にてかざ女はうたちをいつくしくかさり、みやこへのほり給へは、見る人きく人うらやまさるはなかりける。 [page 13] 三月十日あまりに、みやこへつかせ給ふ。てんかのきたのまんところも、たゝゆめのこゝちせさせ給ひて、うれしさかきりなし。たとひいかなるものゝ子なりとも、おろかにはおもふへからすとて、もてなし給ふ。ひめきみは、ふちかさねの七重「へ」きぬに、ゑいそのからきぬ、さくらのくれなゐはかまにほやかにきなし給へは、すかたかゝりまことにいつくしさたとへんかたなし。いかなるゆへに、ふん [page 14] せうとやらんか子にむまれ給ふらん、ひとへにてん人のやうかうかと、御てうあひかきりなし。こんとの御よろこひにとて、ひたちの國を大くうしにたひにけり。さてちうしやう殿みかどへまいり給へは、此ほとはこひしきおりふしに、御よろこひたとへんかたなし。やかて大しやうにそなし給ふ。さて此ほとの事とも御たつねありけるに、いち〳〵かたり給ふ。みかとおほせありけるは、いもうとさためてよかるらんとの給へは、あねよりもまさりて候と申たまへは、やかてせんしをくたされけり。 [page 15] ふんせう此よしきゝせんしかたしけなくは候へ共、あねはちからなし、いもうとは此國にをき候て、あさタ見まいらせではかなふましきよし申けれは、そのよしそうしけるに、さらはちゝはゝともにみやこへめしけり。みかと御覽すれは、あねきみよりもいつくしくおほしめし、御てうあひかきりなし。よき子をもちぬれは、ふんせう七十にてさいしやうにそなされ [page 16] て、ひきあけ給へは、五十はかりにそ見えにける。ひめきみはねうごになりたまふ。さるほとにれいならすなやみ給へば、みかとをはしめさはき給へは、ひきかへ御よろこひかきりなし。十月と申に、御さんへいあんしたまひて、わうしをそうみ給ふ。御めのとには、くはんはくとののゝひめきみ、中宮にまいりたまひぬ。祖おうちごのさいしやうは、やかて大なこんになされけり。いしやしき、しほうりのふんせうなれとも、かやうにめてたきくわほうとも中〳〵申におよはれす。はゝもニゐとのとそ申ける。いかなるくわこのおこなひにやらん、みな〳〵はんしやうして、ゑいくわにほこり、としさへわかく見え給ひ、下人わかとうおほくつかひ、女はうたち上下にいたるまて人にもちいられゑようにほこり給たまふ。 [page 17] さるほとに大なこんは、たかきところにたうをたて、大河「か」にねをうかめ、せうがにはしをかけ、せんごんかすをつくし給ふ。いつれも〳〵御いのち、百さいにあまるまてたもち給ふそめてたき。まつ〳〵めてたき事のはしめには、此さうしを御覽しあるヘく候。 |
| 資料番号 | [配置場所]貴重資料室/[登録番号1]大国2205/[登録番号2]文理7796 |

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