小学女読本 巻一

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ライセンスURI https://dc.lib.hiroshima-u.ac.jp/da/page/license1
所有機関等 広島大学
タイトル 小学女読本 巻一
タイトルヨミ ショウガク オンナ ドクホン
著者 城谷謙著
出版年 1876, 明治9
出版者 村上勘兵衛
出版地 京都
物理サイズ 22cm, 16丁
所在 広島大学図書館
コレクション 教科書コレクション
説明1 [時期]検定制度実施以前 1873(明治5年)~1885(明治18年) [学科]国語, 読本, 古文, 暗唱, 読み方, 書き取り [学校制度]尋常小学校
説明2 [解題]1876年(明治9年)に,城谷謙によって著され,京都の村上勘兵衛によって出版された。「巻一」とあるが,それ以降の巻は確認されておらず,本讀本が刊行されたのはこの1巻のみであると思われる。著者の城谷謙についてはあまり詳らかにされていないが,作家・小林秀雄の母方の祖父にあたり,その編著書・訳書から,初等教育現場に携わって教科書・指導書を多く編んだ人物であることが明らかとなっている。一方村上勘兵衛は現在の平楽寺書店が創業から第11代まで代々掲げた名である。
『小學女讀本』は女性としての生き方指南書とでもいえよう。10章構成となっており,下記の通り整理できる。第一:女性として生まれた者の基本の心得,第二:父母舅姑夫への忠心,第三:家族に仕える女性の生活の在り方,第四:徳を全うすること,第五:外見の美よりも内面を修めることの美,第六:発言に気をつけること,第七:愚かな女にならないこと,第八:家〈内〉を守る女性の務め,第九:(一部破損)未来に備えること,第十:分相応の慎み・心構え。本文では明記されていないが,本讀本は「女は〈内〉,男は〈外〉」という性別役割分業論,また終戦まで日本に定着していた「良妻賢母」というイデオロギー形成の始まりと定位できる。「良妻賢母」の概念を国語教科書に初めて載せたといわれる『國語読本尋常小學校用』巻七「第五課 女子の務」よりも20年以上も早くにこの讀本が出版されていたことは非常に興味深い事実である。
教科書としては修身的な内容の読み物としての性格が強く,挿絵はあるもののルビもなく単語分かち書きにもなっていないため女児の小学生が読むには非常に高度である。なお,本コレクション所蔵の『小學女讀本』は,最終ページの奥付に「著者」という漢字および何らかのアルファベットを筆記体で練習した跡が残されている。ところどころ字をなぞった様子も見られ,明らかに当時誰かが使っていた様子が窺える。(解題執筆:中井 悠加)
参考文献
井上敏夫編. 国語教育史資料第二巻教科書史. 東京法令, 1981
伊藤義器. "坂の町の“未成年”". 昭和文学論考―マチとムラと―. 小田切進編. 八木書店, 1990
小山静子. 良妻賢母という規範. 勁草書房, 1991
資料番号 [登録ID]2000022409 [スリップ番号]20510 [請求記号]教科書文庫/2/810/31-1876/2000022409