奈良絵本 室町時代物語

主に室町時代後期から江戸時代中期にかけて製作された、絵入りの写本である奈良絵本を電子化して、翻刻をつけたもの。収録タイトルは「伊勢物語」「すヽめの夕かほ」「硯わり」「住吉物語」「たはら藤太」「中将姫」「つるのしうけん」「はちかつき」「花世姫」「ふんせう」「やしまのさうし」「横笛草紙」「よしのふ」「頼豪阿闍梨絵巻」の14点。

1.奈良絵本について

奈良絵本とは、主に室町時代後期から江戸時代中期にかけて製作された、絵入りの写本を言います。内容は継子譚や武家物、異類婚譚など、多岐に渡り、室町時代・江戸時代に作られた様々な物語を含んでいます。同期に製作された絵巻をも指して言うことがあります。

奈良絵本という用語は明治以降になって用いられたもので、奈良興福寺周辺の絵仏師が副業に作ったという説のほか、いくつかの説があって、定まりません。江戸時代に作られた、いわゆる「渋川版御伽文庫」に含まれる『文正草子』『鉢かづき』など二十三編の作品も、奈良絵本の形態で残されています。小絵と呼ばれた室町時代の小型の絵巻物から発展したという説もあります。初期のものは古奈良絵本と呼ばれ、素朴なものですが、次第に大型化し、豪華な装丁になりました。嫁入り本とも呼ばれます。美麗な本が多いため、海外に流出したものも多く、ダブリンのチェスター・ビーティ図書館やニューヨークのスペンサーコレクションなどは、優れた作品を所有しています。広島大学はいくつかの貴重奈良絵本を所有しており、たとえば『瓜と龍蛇』(いまは昔むかしは今1、一九八九、福音館書店)に「すずめの夕顔」の挿絵が写真版で掲載されるなど、注目されています。参考書としては、『在外奈良絵本』(昭和五六、角川書店)、中野幸一『奈良絵本絵巻集』全十五冊(昭和六二~平成一)、工藤早弓『奈良絵本』上下(平成九・十、京都書院)などがあり、内容(テキスト)については横山重・松本隆信編『室町時代物語大成』一~十三等があります。

大学院文学研究科教授(執筆時) 位藤邦生

2.資料一覧

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